歌劇《タンホイザー》・・・ワーグナーは《トリスタンとイゾルデ》を作曲する時に《楽劇》と作品を称しました。歌劇、番号付きオペラとも言うのですが、序曲、アリア、重唱とそれぞれが一曲毎に完結していて『第何幕の何番のアリア』と言われることが普通です。『交響曲第何番の何楽章』と言った感じと言えばわかりやすいでしょうか。
歌劇《タンホイザー》には、後の楽劇への種が芽生えていて《パリ版》では序曲と第1幕冒頭のバレエ音楽が繋がるように作り替えられています。初演の《ドレスデン版》の他にも複数のバージョンが存在する、いかにも当時の"歌劇事情"を感じさせます。
ワーグナーとしては状況に応じてスタイルが変わってしまうのを嫌で、楽劇と云った独自の方式をとるようになったのでしょうかね。
歌劇《タンホイザー》には、三つのドイツの伝承が盛り込まれて構成されています。一つは『タンホイザー伝説』。ヴェーヌスベルクで数年を過ごした青年が戻ってきて、正しい生活に目覚め悔い改めてローマ巡礼の旅に出るというはなし。
二つ目は『ヴァルトブルクの歌合戦』。領主からお題を出されて、騎士たちが即興で歌うという歌試合。日本のお正月の句会を思わせますね。ここで『愛の本質』について歌えと題が出て、愛は男女のふれあいにのみあると云って、概念的な『愛』をけして口にしなかった歌手がいた。と言う伝承。
三つ目が困っている人々を救済する生涯を送ったドイツの伝説のお姫様、『聖女エルザ伝説』。彼女はどんなことでも、許した愛するために生きた女性だったと云うことです。
歌劇《ローエングリン》が、舞台神聖祭典劇《パルジファル》の息子で、祝祭劇《ニーベルングの指環》に繋がる大きなリングだとするならば、歌劇《タンホイザー》から発展したのが楽劇《トリスタンとイゾルデ》の幻想的な愛憎劇。喜劇的楽劇としての《ニュルンベルクのマイスタージンガー》と観ることが出来るのではないでしょうか。
作曲家ワーグナーが幼い頃に聞き親しんだドイツの伝説が《リング》であり、革命への参加など生活感をにおわせるのが《マイスタージンガー》であり、《トリスタンとイゾルデ》と。
愛の本質を追い求めた《トリスタンとイゾルデ》は、NHK-FMの《バイロイト音楽祭2011》の最終日に放送されます。2日目の今夜は《ニュルンベルクのマイスタージンガー》が放送されます。
ドイツの職人社会を舞台に、騎士のたしなみであった歌試合が職人の中でも発展。今年の大会の栄冠はエヴァから受けることができる、と言うもの。エヴァは金細工師ポークナー親方の娘で、今年度の『大会賞品』となるのですが勝者と結婚すると云うことで、なんとなくなんとなくを丸く収めた形。おとぎ話には良くある『賞品』だから、良いのかなぁ。
現在の演出。プレミエの時には大きな話題になったけれども、慣れてくると《徒弟たちの踊り》で登場する人形たちが可愛い存在になりました。
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