七草粥とドイツ魂の巨匠・・・オルガンの響き 新春、美音レコードの一考察

一月七日、七草です。七草粥を召し上がりましたか?

春の七草は、『セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ、春の七草』と呪文のように母の言うとおりにオウム返しに覚えました。家庭菜園をしていたほどではありませんでしたけれども、屋敷うちのかどかどにはニラ、三つ葉、山椒等々。ひともじもわたしが旬に食べる分には充分採れました。

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松、柊や山椒は、魔除けとしても植えてあったようです。北東の角には門があったものの出入りは出来ないようになっていて、日頃の出入りは玄関から南の長い木戸を通って表に出なければ成りません。小学校に遅刻しそうな時など、北東の門を乗り越えた方が五分以上は時間が短縮できるのにな、と思いながらも気配を察していた母に先に釘を刺されていました。

春には母とつくし摘みを小学一年の頃までは、近くで出来ました。今では埋め立てられてマンションが建っています。そこが大きな池地であったこと、今、住んでいる方々は思いもしていないことでしょう。

鳥羽・国崎の七草粥は、大変ユニークで『ひじき』や『布海苔』など海の七草というのがあるそうです。

セリ。ナズナはぺんぺん草で、中学校のグランドに良く育っていました。スズナはカブ、スズシロは大根。ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザは八百屋で目に留まる菊科やナデシコの仲間をその時々に臨機応変。これらを六日の日に楽しく刻んで、神棚に供え翌朝にはこれでお粥を頂くのです。

 

木曜日だったかお昼の『ごきげんよう』で、おせちで最初に食べるのは何か?というアンケートがありました。一番多かったのは『栗きんとん』。中には『お雑煮』を上げた人もいたようで、若い人にとっては取り立てておせち料理は食べないようですね。

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一月七日、1967年にカール・シューリヒトが、87年にも及ぶ生涯を閉じた日です。45年前になります。偉大なフルトヴェングラーと並び称されるドイツの巨匠指揮者。高名な文化人の家庭に生まれたフルトヴェングラーは、常に陽のあたる場所で生きましたが、ドイツの地方都市で代々オルガン製作者の家系だったシューリヒトは、その確かな才能だけで地方の歌劇場などで地味に活動しました。カールが生まれる3週間前に、父親が亡くなっているので苦労も多かったろう。雇い人が海岸で溺れそうになっているのを助けようとして絶命してしまった。その父親の行いはシューリヒトの音楽に現れているように感じられます。

 

ドイツ魂の巨匠・・・この冠には聴くのを遠ざけてしまう要素もあるでしょうが、シューリヒトの録音は近年録音されているオーケストラのCDと比べると、より現代風に楽しめるのが魅力。グラモフォンとかDECCA、EMIと言ったメジャーレーベルでの録音は少ないのが残念ですが、十分な録音を残してくれました。

70歳を過ぎてから、滅多に指揮者に心を許さないウィーン・フィルが、心から畏敬の念を抱くほどの指揮者でした。英DECCAでシューリヒト指揮ウィーン・フィルの「モーツァルト:交響曲No.35《ハフナー》」の録音を聴いたカルショーが、『この録音のシューリヒトはもうろくしていた』と言ったとか、他人の評価に敏感な若い人たちには、そのような話は聞く前に結論を下させてしまうことになりそう。先輩の言うこと、上司の忠告、親の助言。50年も前のエンジニアの言葉は素直に飲み込んじゃうのかな。

洒落の効いた英国紳士の言ったことだけで神棚に供えたままにしないで、シューリヒトを陽の下で聴いて楽しむのが良い。

シューリヒトはブルックナーを十八番にしたから、ブルックナーファン、マーラーファンも巨匠指揮者であったことは多くがご存じ。『宇宙的響きの《第8番》』と高い評価がされているから、厚味のある壮大なサウンドを体中で感じたい。そう、思うと肩すかしを食う。

 

デジタル化されてしまうと、シューリヒトの音楽は薄っぺらい印象に聴いてしまっている人が多いかもしれない。それぞれの楽器の音の線が細やかで、無限の星々が姿を変えながら大宇宙のハーモニーをおのおのの輝きで構造しているような・・・アナログで、そのような音の再生を目指すのにシューリヒトの音楽は最適です。

代々オルガン製作者だったシューリヒトがオーケストラで作り出してくれた音楽は、オルガンの響きを教会やホールの広い空間で反響した音楽を聴かれることを念頭に、オルガンのストップ操作をするようなオーケストラの楽器それぞれの音色を充分に生かしている。オーケストラが個性の集団である、ウィーン・フィルが"心からい畏敬の念を抱いていたほど"だったというのは指揮者が音楽を押し出すのではなく、そこここに自由にある楽器の音色で音楽に推進力を与えていくようなところにあるのでしょう。

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シューリヒトが録音したレコードにはシューマンの《ライン》交響曲が少なくなく、代表的録音でもある。シューマンの「交響曲No.3《ライン》」はロベルトを愛するクララが画策をしてでも、ヴィークの手から逃れて愛を成就させようとした。苦労の上の結婚をして、幸せの中で旅して観たライン川の風光明媚が音楽で再現されます。

その新婚旅行の音楽は、システマティックな旅を思わせないもので穏やかで晴朗。ブルックナーの音楽を愛する人には、尚更に楽しめるシューマンの《ライン》交響曲ではないかと感想を持っています。

 

先日、NHK-FMの『気ままにクラシック』でバッハの《管弦楽組曲第2番》からフルートが美しい《メヌエット》が放送されていました。クラウス・ポーラーのフルートは生き生きとしていて、古い録音だと感じさせない瑞々しい音楽でした。

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録音されたテープの音は、リマスタリングされる度にやせ細っていくのは致し方ない。デジタルコピーは劣化が無いのなら、最初にデジタルコピーしたものでリマスタリングをするのが良いと思うのだけれども、オリジナル・マスターテープから新たにリマスタリングしたCDですというPR文句がたびたびと繰り返されている。

教会に作り付けられたオルガンはメンテナンスをきっちり続けることで、何百年も音が守られていきます。シューリヒトの音楽は教会オルガンが繊細で美しい音程の単音が、綾なして造った美であるのに似ている。

 

仏CONCERT HALL/SMS-2231/カール・シューリヒト指揮フランクフルト放送交響楽団/バッハ:管弦楽組曲No.2、No.3/9,450円(送料+税込)
仏CONCERT HALL/SMS-2231/カール・シューリヒト指揮フランクフルト放送交響楽団/バッハ:管弦楽組曲No.2、No.3/12,600円(送料+税込)

 

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