カラヤンのミステリー むしゃん良か男なぁ - 荒波に揉まれて人間は成長する。でも、それは生き様で、才覚は持って生まれた天分。

帝王ヘルベルト・フォン・カラヤンの最初のレコードが発売されたのは1939年。最初の記念すべきレコード録音セッションは前年の12月9日、モーツァルトの歌劇『魔笛』序曲でスタートしました。欧米ではこれが最初のレコードとして発売されたわけだけど、日本では翌年のベルディの歌劇『運命の力』序曲が先の発売となりました。

Karajan1940

華々しさを感じるので日本のレコード販売戦略としては、『運命の力』序曲を選んだのでしょう。今だと軽やかにモーツァルトでデビューというのがおしゃれなのかもしれませんが、戦前の日本でのモーツァルトの認識度は宜しくなく。写真の様な優男のカラヤンなので、軽んじられていたのかも。
しかしまぁ、よか男ばい。むしゃんよかなぁ~♪

と言うことで、1941年録音のベートーヴェン、交響曲第7番を聴いています。のだめカンタービレで、ベト7として良く知られていますね。
交響曲の録音では、チャイコフスキー、ブラームスと来て三枚目の物になります。その後ベートーヴェン全集に力を注いだ帝王が最初に選んだのが、葬送行進曲が印象的な7番というのは面白い。
時はフルトヴェングラーの天下。フルヴェンの目を盗んでレコード活動にいそしんでいたカラヤン。巨匠が録音する予定に無いものを録音するしか無かったのです。
第1楽章冒頭から意外なハーモニー。フルトヴェングラーの音楽造りへのアンチテーゼがぷんぷん。その微細な音の重なりは、繊細を極め。大きな音を響かせることよりも、レコードというパーソナルスペースで堪能できるサウンドになっている。
嘗て、ワーグナーの指環をショルティと録音権を争ったカラヤン。カラヤンの指環は室内楽的だと評されていた様に、ベートーヴェンの葬送行進曲は、奏者の妙味、テクニックを効かせることよりも党則の撮れた神経質さを垣間見せています。

第3楽章は中間部が聴かせます。これほど秀麗な軍楽隊は無いでしょう。失速を畏れずと言うか、優雅です。最初からレコードが良く売れていて、エンジニア側に注文が言えたのだろうかと思いたいほどに、丹念に音が録れています。第4楽章は、ダイナミックレンジがあれば円熟期のグラモフォン録音と寸尺異なりません。第1楽章冒頭と通じるところがあって、短く切り返す弦楽のスタッカート気味な歯切れの良さ。カミソリの様なシャープさに陥る寸前の美。

CDの復刻も上々で、パチ音もごく稀。ジリ音も極めて弱音の部分で感じられる程度です。試聴とダウンロードは http://amzn.to/ztWKwm

 

 

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